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2021年4月1日 20:37

70. 検査でみつからない 胃腸の冷え症(1)

前回までは「手足が冷える」冷え症がテーマでした。

実は冷え症は体表の冷えばかりではありません。「胃腸が冷える」ことが問題のこともあります。

体の表面を「表(ひょう)」と呼ぶのに対して、内臓とりわけ胃腸を「裏(り)」と表現し、その場所の冷えを「裏寒(りかん)」といいます。

今回は、この「裏寒(胃腸)の冷え症」についてお話をいたします。

 ・・・

41歳女性、身長156㎝、体重50㎏。

悩みは「お腹が張る」という症状です。

お話を伺うと、ガスがお腹の上まであがってきて膨れてしまう、左のわき腹がきゅっとする、お腹がグルグル鳴る、朝方にゆるい便が出やすい、などの症状があります。

 

このような方の多くは、すでに胃腸の内視鏡検査を済まされています。でもたいていは大きな問題が見つからず、過敏性腸症候群や機能性胃腸症などの病名をいただいてきます。ただ胃腸のお薬を飲んでも、なかなか効果が実感できないことが難点です。

 

さらに悩みは、お腹だけではなさそうです。

背中から太ももにかけて、シンシンと底冷えする、

顔から頭のてっぺんにかけ引っ張られる、

生理のときは腰回りが重く冷たい、などなど。

どうやら体表の冷えも伴っています。底冷えしているせいで、温かい物が好物、お風呂も長湯なのだそうです。

本当は、もう一人子供がほしい様ですが、なかなかうまくいかないそうです。基礎体温表をみせていただくと、やっぱりバラバラでした。

 

冷えはどうやら体の芯から全身に広がっていて、手ごわそうです。

 さあ、そのような場合は漢方の出番です。


このような方のお腹には冷感があります。とくに「中脘(ちゅうかん)」という胃の中央付近にあたるツボは冷えきっています。

そうなると、「人参湯にんじんとう)」を処方してみます。

これは、人参を中心に甘草かんぞう)、乾姜かんきょう)などの生薬が合わされたお薬で、体の裏を温める作用が期待できます。

 

さらに冬には、附子(ぶし)を足してみました。

これは「人参湯加附子 にんじんとうかぶし(=附子理中湯 ぶしりちゅうとう)」という名でよばれる漢方薬です。

このように、体を温める生薬である乾姜と附子がそろうと、体の芯に火種をもたらすことができるのです。

 

実際これを飲んでいただくと、お腹からガスが出てきました。それに胃腸が落ち着いてくると、今度は体全体が温まってきました。

このように時間をかけ、ようやく調子が回復してくるのです。

 

「漢方トゥデイ」ラジオ日経 2016年放送分から改変

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