昨年より、新型コロナウイルスが隆盛を極めています。1-2年に及ぶ自粛、経済の停滞、会食や旅行など娯楽機会の喪失、そして感染にかかわるストレスは想像を超えるものがあります。
どの世代の方々にとっても、1年1年は貴重なものであり、これは大変なことといえます。
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ところで、過去の感染猛威といえば、1000年前の平安時代以降、インフルエンザなどの流行の記録が残されています。
江戸時代260年の流行り病は「武江年表(斎藤月岑 著1850年)」と「日本疾病史(富士川游 著1944年)」から、私が数えてみると、
・風邪(インフルエンザ) 29回
(慶長19年(1614年) ~慶應3年(1867年))
・疫病 36回
(文禄3年(1594年)~文久元年(1861年))
・虎狼痢(コレラ) 7回
(元禄6年(1693年)~文久3年(1863年))
・痘瘡(天然痘) 16回
(元和元年(1619年)~文久元年(1861年))
・麻疹(はしか) 16回
(天正5年(1587年)~文久2年(1862年))
と記録に残されています。他に梅毒、老咳(結核)、瘧(マラリア)などの記載もあります。
またちょうど100年前の大正7年(1918年)には、スペイン風邪(インフルエンザ)が世界規模で流行ったことも有名です。
そう考えると、今回のパンデミックな新型コロナウイルス感染症は、今後数百年間、歴史の教科書に残る出来事といえるでしょう。
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そんな新型コロナ感染症は、変異株や容態急変などが問題となっていますが、最近では後遺症も難題のひとつとされています。
後遺症は、
・倦怠感 (だるさ)
・遷延する咳、呼吸苦/息切れ
・嗅覚/味覚障害
のほかに、微熱、筋肉痛/関節痛、しびれ、胃腸症状、脱毛、頭痛、不眠、抑うつ、記憶障害などが報告されています。
新型コロナウイルスのことを学術的には“SARS-CoV2”というのですが、世界保健機関(WHO)が “COVID-19”と名付けたため、後遺症のことはLong COVIDまたはPost COVIDとよばれることもあります。
その後遺症の有病割合は、おおむね3か月以上持続する方が5-20%、6か月に及ぶ方は2-10%くらいと推察されています。
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新型コロナウイルスは、飛沫(ひまつ)と接触によって感染します。飛沫感染とは感染者の咳、くしゃみ、会話によって飛ばされたウイルス飛沫を、ほかの人が鼻や口から吸い込むことによって感染することをいいます。
一方、接触感染とはウイルスが付着した何かに手が触れ、その手が口や鼻などに触れることでウイルスが体内に入ることをいいます。
ウイルスが体内に侵入すると、血管の内壁や肺にあるACE2受容体にくっつき炎症がおこります。
そして次々と作られるサイトカインという化学物質により内臓に影響が派生し、そのときひきおこされた損傷によって後遺症がつくられます。
これまで感染者は国内で170万人、世界で2億2000万人おり、その中から後遺症の報告がなされています。しかし新型ウイルスであるがゆえに、治療法は確立されておらず、今はどの医療・研究機関でも手探り状態です。もちろん専門家もいません。
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そんな中、当院にも後遺症について相談に来られる方が増えてきました。当院では今のところ、従来の西洋医学での対症法に加え、東洋医学を併用しています。
東洋医学は、2000年以上にわたる中国史の中で、幾重にも感染流行と争いがあり、その中で虚労におちいった民に対応してきました。
「邪に中(あた)らずといえども、邪気乃ちあらわす」
内因の病によって精気が脱けると、外因による合併症もおこりやすい、と治療を施してきたのです。
その延長線上にある我が国の漢方薬も、体を包括的にとらえる医療であり、この度の後遺症に対して、選択幅の広い薬剤として期待されています。