以前よりお話ししている通り、熱お血は『血の塊が滞り、熱分がうっ積している状況』のことをいい、
冷えお血は『熱分や血水が足りなくて停滞し、体が冷えびえしている状況』のことをいいます。
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さて、実証の熱お血を解消させる薬に「承気湯類(じょうきとうるい)」があります。 これは、のぼせや、自律神経症・精神症を治す治療薬です。
「承気(じょうき)」とは、体の上の方にたまった気血を「下で承る(うけたまわる)、下の方に伝承させる」という意味です。
ただし伝達させるのみならず、便として体外に排泄、捨ててしまう作用があります。
自律神経症とは、
頭痛、めまい、耳鳴り、のぼぜ、動悸、口の乾燥、腰痛、下腹痛、便秘、煩熱(はんねつ)、足冷えなど、
精神症とは、
興奮、不眠、健忘、狂状(ヒステリー)、譫妄(せんもう)などです。
そして女性の熱お血に用いられる代表的な承気湯類に「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」があります。
薬の構成は
〇気(き)を調整する生薬に
桂皮(けいひ)
◎血(けつ)を調整する生薬には
主役の生薬 桃仁(とうにん)
が用いられ、これが強力に血の塊、お血を破壊します。
そして、
大黄(だいおう)、芒硝(ぼうしょう)
が血の塊を体外に排泄させ、体をすっきりさせます。
この一連の作用を瀉下(しゃげ)、逐瘀(ちくお)といいます。
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ところで、これを投与する際の目安として、古人は“特異なお腹の所見“を記しています。
「左下腹部に索状の抵抗物を触れ、そこを3本の指でこするとアッとしかめ面で痛がる者に用いる」
これを『少腹急結(しょうふくきゅうけつ)』とよんで、強いお血徴候と考えていたのです。