実証の熱お血を解消させる薬に「承気湯類(じょうきとうるい)」があります。 これは、のぼせや、自律神経症状・精神症状を治す漢方治療薬です。
前回まで桃核承気湯(とうかくじょうきとう)についてお話しをしました。
ちなみに、熱お血とは『血の塊が滞り、熱分がうっ積している状況』のことをいい、反対の冷えお血とは『熱分や血水が足りなくて停滞し、体が冷えびえしている状況』のことをいいます。
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承気湯類の「承気(じょうき)」とは、体の上の方にたまった気血を「体の下の方に伝え、承る(うけたまわる)」ことを意味し、作用は「(毒素を)便として体外に排泄する、捨てる」ことにあります。
漢方で、強い(1) 自律神経症状と(2) 精神症状を治す場合、この承気湯類を考慮します。
自律神経症状には、
頭痛、めまい、耳鳴り、のぼぜ、動悸、口の乾燥、腰痛、下腹痛、便秘、煩熱(はんねつ)、足冷えなど、
精神症状には、
興奮、不眠、健忘、狂状(ヒステリー)、譫妄(せんもう)などがあります。
そして女性の熱お血に用いられる基本的な承気湯類として「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」があるわけです。
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ところで、その桃核承気湯には成り立ちがあり、根幹に生薬の大黄(だいおう)が存在しています。
大黄には「お血を改善させて(毒素)を体外に排出する(瀉下、逐瘀)」作用以外に、「気血の通り道である経絡をひらく」作用があるとされています。
大黄剤は、以下のように発展変化しています。
・大黄湯 (将軍湯)
= 大黄のみ
↓大黄甘草湯 (だいおうかんぞうとう)
= 大黄+甘草(かんぞう)
↓調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
= 大黄+甘草+芒硝(ぼうしょう)
↓桃核承気湯
= 大黄+甘草+芒硝
+お血剤の桃仁(とうにん)+気剤の桂皮(けいひ)
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これを源流とすると、支流へ派生する薬もあり、その末に通導散(つうどうさん)が存在します。
派生薬には気剤が充足されており、精神と自律神経の調整が意図されているようでもあります。
精神やら神経やら、そのような概念がなかった時代の名医の思慮深さに本当に驚かされる次第です。
・調胃承気湯
= 大黄+甘草+芒硝
→大承気湯(だいじょうきとう)
= 大黄+甘草+芒硝
+気剤の厚朴(こうぼく)、枳実(きじつ)
→通導散(つうどうさん)
= 大黄+甘草+芒硝+厚朴、枳実、陳皮(ちんぴ)
+お血剤+利水剤
通導散には、
◎血(けつ)を調整する生薬に
当帰(とうき)、紅花(こうぼく)、蘇木(そぼく)
木通(もくつう)が用いられています。
大承気湯は、気剤の厚朴、枳実が精神神経作用の安定を促し、大黄、芒硝が余分な血の塊を体外に排泄させます。
これに追加でお血剤が上乗せされている通導散は、ひどく精神不安に陥いりやすい女性にまで対応可能なお薬となっています。