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2024年3月31日 22:09

105. 感冒・鼻炎・咳に漢方薬(小青竜湯)

 今回は鼻水の漢方薬で有名な『小青湯(しょうせいりゅうとう)』の話です。

 

 さて前回お話の漢方薬「葛根湯」には

 (a)生薬の麻黄(まおう)が使われている

 (b)桂枝湯(けいしとう)の発展処方である

の2つの特徴が含まれます。

 

 実は小青竜湯にも麻黄が含まれているので、葛根湯と同様、麻黄剤(まおうざい)とよばれています。

・・・

 ところで麻黄というのは、組み合わせ生薬によって、発揮される作用が変化します。

たとえば

 〇麻黄 + 桂枝    汗を出す作用

 〇麻黄 + 細辛    尿を出す作用

 〇麻黄 + 石膏    熱を冷ます、汗を止める作用

 〇麻黄 + 杏仁    咳をしずめる作用

 〇麻黄 +  朮    尿を出す作用

 〇麻黄 + 乾姜    肺を温める作用

 〇麻黄 + 薏苡仁 痛みを止める作用

 〇麻黄 + 附子    寒さを散らす作用

 つまり麻黄に含まれる色々な成分が、組み合わせる生薬によって、賦活(ふかつ)されたり、抑制されたり変化するのです。

 葛根湯はこのうち、発汗が意図された漢方薬といえます。

 

 小青湯の構成は、

  麻黄

  桂枝(けいし)

  甘草(かんぞう)

  芍薬(しゃくやく)

  乾姜(かんきょう)

  細辛(さいしん)

  半夏(はんげ)

  五味子(ごみし)

 であるため、効能は

 

 (1)麻黄と桂枝で発汗させ、体内に侵入した邪を退治できる

 (2)麻黄と乾姜で、肺を温める

 (3)麻黄と細辛で、体内の不要な水分をはき出す

などが期待できます。

 

 これを利用して、“冷たい空気によって、鼻の奥が冷やされ生じた鼻炎”、に用います。

つまり、”鼻粘膜が蒼白化する”場合の主な症状は、透明な鼻水やくしゃみ、ですので、花粉症の治療に都合がよいという訳です。

 

 ちなみに2000年前の中国医書傷寒論(しょうかんろん)』には、小青竜湯は、しきりにくしゃみをする、水様の鼻汁が出る、痰のからまった喘鳴が生じる、そんな“心下に水気(しんかにすいき)した状態”に用いると良い」と書かれています。

・・・

 

 では今、小青竜湯が冷えた鼻粘膜に適当、とあれば、逆に

鼻粘膜が熱を帯びて、赤く腫れた鼻炎” は、どうでしょう。症状といえば、鼻閉(鼻つまり)です。

 

この場合、小青竜湯だけでは効能不足なので、

 (4)麻黄と石膏(せっこう)で熱を冷ます

作用を考慮します。

 

 ただ残念ながら小青竜湯には石膏が含まれていません。

そのため煎じ薬であれば、石膏を混ぜ合わせます。

 またエキス剤であれば、

  越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

  麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

  桔梗石膏(ききょうせっこう)

など、石膏を含む漢方薬を併用します。

 

 西洋医学では、抗生剤やアレルギー剤など、耳鼻科でも内科でも、大学病院でも診療所でも、通り一遍の治療が行われます。

 でも東洋医学では、思考に深みのある処方が展開されているのです。

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