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2024年4月29日 12:58

106. 感冒・鼻炎・咳に漢方薬(麻黄湯)

 葛根湯も小青竜湯も、生薬の麻黄(まおう)を含む  “麻黄剤”であることをお話ししました。

 そして、今回お話しする『麻黄湯(まおうとう)』もそれを含む漢方薬となります。

 

 まず葛根湯ですが、以下の生薬で構成されていました。

 麻黄、桂枝(けいし)、甘草(かんぞう) +

 芍薬(しゃくやく)

 生姜(しょうきょう)

 大棗(たいそう)

 葛根(かっこん)

 

 一方麻黄湯は、

 麻黄、桂枝、甘草 +

 杏仁(きょうにん)、で構成され、中核部分は同じです。

 

 これら麻黄剤は機能面から、“解表剤(げひょうざい)”といわれており、「発熱疾患に対し、発汗をうながす作用」を有しています。

・・・

 ではどうして、熱性疾患の治療に、発汗が大事なのでしょうか・・・

 

 実はコロナやインフルエンザのようなウイルス、あるいは溶連菌のような細菌が侵入すると、人体ではこのような反応が始まります。

 まず悪寒

 次に発熱

 

 ”ばい菌”は、体温の高い環境におかれると、増殖する力が停滞し死滅するという弱点を持ち、風邪初期の人体では、体を守るため体温上昇機構がスタートします。

このときの発熱が病邪に対する「抵抗力/抗病力」となります。

 

 西洋医学では解熱剤カロナールやロキソニンが処方されますが、これらは熱を下げることを意図するため、人体の防衛メカニズムからみると逆行する働きとなります。

 ただまったく無益ともいえず、過剰な発熱が時に脱水やけいれんを生むので、それらを緩和予防する点で有意義といえます。

 それに熱でうなされていては、身体精神ともにつらいですし。

 

 一方東洋医学では、発熱治療に麻黄剤(解表剤)を内服させ、

 さらに体内温度を上げ、

 これによって、人体の抗病力を激激‥増増させ、

 病邪を退治します。

 

 そして病邪を退治した暁に、発汗させます。

 

 西洋薬のなかった古い時代から、東洋人はこうして熱疾患を治療してきました。西洋医学とは違う視点での治療プロセスというわけです。

・・・

 解表とは、発汗によって肌表の邪を除くこと、

つまり、発汗を通じて体内に侵入した病邪(ウイルスや細菌)を体外に排斥させることです。

発汗とは、その過程がとどこりなく終了した目安であり、勝利宣言です。まるで打ち上げ花火のようです。

 

 葛根湯や麻黄湯はそれら役割に長けた漢方薬です。

投薬のタイミングは、発熱しているけれども、まだ発汗していない頃、いう点が肝というわけです。

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