このところ記録的な猛暑日が続いています。昼間のうだるような気温に辟易してしまいます。
そのような中で内科では、新型コロナウイルス以外にも、ヘルパンギーナ、溶連菌、マイコプラズマなどの感染症が急激に増え、外来がいっぱいになっています。中には二つ同時感染している方もでてきました。
今流行中のコロナは「オミクロン系統 KP.3株」であり、日本国内のみならず、欧米でも再流行している様です。
このKP.3は以前の株と比べ、感染力がとても強く、一度コロナ感染を経験した方やワクチンをうった方にも簡単にうつってしまいます。
皆さん、強いのどの痛み、咳と発熱を訴えています。
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さて、
前回まで風邪初期に用いる漢方薬の話をしましたが、それらはおもに初期の悪寒/発熱期に用いるものを並べています。
今回は、感染からちょっと数日経たころに用いる漢方薬「小柴胡湯(しょうさいことう)」を紹介します。
漢方の世界では、発熱疾患の初期の頃を「太陽病(たいようびょう)」といい、病邪がまだ体の表面にいる状況と考えます。この時の症状は、悪寒、発熱、頭痛、首筋の凝りです。
しかしそれから時間を経ると症状が変化し、口の中におかしな症状を感じたり、朝と夕の熱の出方が変わったり、咳が出てきたりします。
この時期は、初期の頃とは様子が異なるので、漢方では病邪が少し体の内側に移動し始めた状況「少陽病(しょうようびょう)」と考えます。
そしてこの時期に用いる漢方薬が、まさに小柴胡湯となります。
小柴胡湯の成り立ちは、
柴胡(さいこ)
半夏(はんげ)
生姜(しょうきょう)
黄芩(おうごん)
人参(にんじん)
大棗(たいそう)
甘草(かんぞう)、です。
これら生薬から、次のような特徴を述べられます。
まず、柴胡と黄芩の組み合わせが、
半夏が、
半夏と生姜の組み合わが、
人参、大棗、生姜、甘草の組み合わが、
そして以下の生薬が、気持ちや自律神経を安定させます。
- 柴胡が、イライラ気分を抑えるように作用する
- 甘草と大棗が、ヒステリー気分を抑えるように作用する
- 半夏が、気持ちを鎮静させるように作用する
これらの結果、発熱数日後から生じる諸々の症状、
例えば
しつこい咳
朝は平熱だが、夕には発熱する変調
気分の上がり下がり
口の中の苦み、味覚障害や匂いの変化
食欲不振
などに対応できる特徴を発揮します。
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ちなみに、
漢方診療三十年 大塚敬節著(創元社)から、小柴胡湯の覚え書き(要点)を列記させていただきます。
(1)小柴胡湯を急性病に用いる場合には、口が粘るとか、口が苦いとか、舌に苔がつくという症状が現われ、食欲もなくなり、みずおちから、脇ばらにかけて重いような、つまったような感じがあるものに良い。
(2)熱は往来寒熱といって、悪寒の後で熱がのぼり、その後熱が下るときや、悪寒のある熱や悪寒を伴わない熱の続くときに用いて良い。
(3)肋骨下に圧痛を訴えたり、胸脇苦満(きょうきょうくまん)といい、自覚的に季肋下にかけてつまったような重さが感じられるときに用いて良い。