熱を伴う感染症の後、
体力のない方、高齢の方、あるいは後遺症で悩まれている方に見られる慢性症状があります。それは、
だるさ
冷え
下痢/嘔吐などの胃腸症状
ときに発汗、などです。
このような状況の病態を「厥陰病(けっちんびょう)」といいます。
これは”新陳代謝の落ちた極地“であり、もっとも重篤な病態です。
別の言い方をすると ”体の充電が赤く点滅しているほど衰弱した状態” といえます。
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この厥陰病については、2000年前の中国医書『傷寒論(しょうかんろん)』に書かれており、
「厥陰の病たる、消渇(しょうかち)、気上りて心を撞(つ)き、心中疼熱(しんちゅうとうねつ)、飢えて食を欲せず、食すれば即ち蚘(かい)を吐し、これを下せば利止まず(りやまず)」とあります。
すなわち、
口の渇きがひどく、気が上がって心臓が突き上げられ、胸の中が熱く耐えることができない。
食べてもすぐに回虫を吐き、下剤を与えると下痢がやまない・・。
脈をみると、か弱く、いかにも元気のなさが見てとれるので、それと分かるわけです。
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この厥陰病になるとお薬は、
・通脈四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)
・茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)
を考えます。
ただエキス剤にはないので、煎じ薬での対応となります。
これが本格漢方クリニックの奥の手なのですが、一方「煎じるほどの元気はない、家族の協力も得られない」場合もあり、そうなると既存のエキス剤を2つ合わせ、内容を似せて飲んでいただくことになります。
具体的には、
通脈四逆湯は「甘草・乾姜・附子」、
茯苓四逆湯は「甘草・乾姜・附子・人参・茯苓」
なので、エキス剤(EX)の
人参湯EX「甘草・乾姜・人参 + 朮」と
真武湯EX「生姜・附子・茯苓 + 朮・芍薬」
これら2つを一緒に飲むことを約束し、四逆湯の類似薬で対応するということになります。
現代日本では、ここまで悪化する前に病院を受診されるため、典型的な厥陰病に遭遇することは多くありません。
しかし病態を参考にして処方すると、体力の回復される方がいるのも事実です。