漢方では患者さんの症状から、ゆがみの原因が何であるのかを探ります。その判断のためのものさしの一つが、「気」「血」「水」の要素です。これらの過不足や不均衡の様子を察し、修正することが要になります。
気のゆがみ
「気」は、体をめぐるエネルギーであり、体全体を上下隅々まで行き来しているものと考えられています。まるで都市部を走る電車の路線のようです。これによって精神、自律神経、内臓の動き、ホルモン、免疫力、神経の伝達などが支えられています。
気は体全体を流れるため、異常が生じると様々な箇所に不自然な症状がでてきます。気のゆがみには次のようなものがあります。
(1)気うつ
(2)気虚(ききょ)
(3)気逆(きぎゃく)
(1)気うつ
何か体に問題が発生すると、気の流れがせき止められている状態を考えます。この状態を「気うつ」といいます。とくに昔は、精神は肝にやどると考えられていたため、肝で気がうっ滞することを「肝気うっ結」といいました。気持ちが晴れず、イライラしている様子です。
(2)気虚
元気がなくなってしまった状態を「気虚」といいます。気の量が足りなくなっている状態です。現代医学でいう、うつ状態をイメージするとわかりやすいでしょう。食欲の低下を伴います。
(3)気逆
気が体全体を順行に流れなくなり、体の下から上へ、一方通行に流れる状態を「気逆」といいます。特にこの突き上げる激しい状態を昔の人は「奔豚(ほんとん)」といいました。子豚が体を下から上に向かって、あわてふためき、息せき切らしながら走る姿です。これは思わず笑みを浮かべてしまいそうな妙を得た表現といえます。ほてり、のぼせ、急な頭痛、咳の発作などがみられます。
漢方治療では、これらの気のゆがみを把握し、お薬や生薬を選択しています。