「気・血・水」のうち、「水(すい)」とは体液のことを指します。もちろん「血(けつ)」も体液の一つですが、こちらは赤い血液のことであり、血液以外の体液を「水」とよんでいます。
中国の古い医書に「黄帝内経(こうていだいけい)」や「難経(なんぎょう)」があります。それらに『「血」には体を温める成分と、冷ます成分がある』と書かれています。
体を温める成分とは、体をめぐる血液のことですが、古典ではこれを「営気(えいき)」よんで、体を栄養する役割をあてはめています。
一方、体を冷ます成分を「津液(しんえき)」とよび、血液以外の「水」をあてています。
さて漢方では、「水」は体内で均等に分布していることが良いとされています。言い方を変えると、この均衡が崩れたときが病気となります。これを「水毒」と表現します。
体内の局所で「水」があふれると、ポテッとむくんだり、胸やお腹にたまったりします。
一方「水」が足りなくなると、目や口、のどが乾いたり、脱水が生じたりします。あふれても、足りなくても、「水」にまつわる問題は、いずれも「水毒」となります。
これには、頭痛、めまい、発汗、胃もたれ、嘔吐、下痢、むくみ、冷え、ドライアイ、口渇などがあります。すべて体内で「水」が不自然に移動しておこる現象です。
ところでイタリアにヴェネツィアという「水の都」があります。この街のサン・マルコ広場では、高潮や風の影響を受け水没してしまう現象が見られます。
しかし歩くことさえできない水没でも、潮や風の影響が薄れてしまうと、数時間で水が引けてしまいます。そして同じ街の広場とは思えない光景がひろがります。
体内でもこれと同様、単なる水の移動によって起こる現象があり、これが「水毒」の本質です。体内では、きっと自律神経やホルモンの影響を受けて変化しているのでしょう。
治療では、生薬の力を利用して「水」のかたよりを補正します。「水毒」を調整する生薬には、以下のものがあります。
茯苓(ぶくりょう)
猪苓(ちょれい)
沢瀉(たくしゃ)
朮(じゅつ)
防己(ぼうい)
附子(ぶし)
木通(もくつう)
薏苡仁(よくいにん)
車前子(しゃぜんし)・・・
これらの生薬がまとまって、五苓散(ごれいさん)のように構成されている漢方薬もあります。しかし、必要な生薬だけを付け加えて対処することもあります。
実は日本は、四方海に囲まれ、多湿な気候であるため、「水」に関する悩みが多いのです。そこで、自身が「水毒」の体質であるか判断するために最適な方法があるので、それを紹介します。
それは、"鏡で舌を見ること"です。
もし舌の縁にデコボコの歯形がついていれば、あなたは「水毒」体質といえます。そしてもっとひどい「水毒」になると、舌全体がボテッと大きくなります。
頭痛やめまいなどのお悩みがあれば、一度舌をご覧になられてはいかがでしょうか。