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2020年4月29日 15:46

58. 検査でみつからない 下痢

下痢に対する治療は、当然西洋医学にもあります。

感染や炎症、悪性疾患による下痢に、抗生剤、整腸剤、免疫抑制剤、ステロイドなどの薬剤を用いたり、手術を行ったりします。

 

東洋医学では、全身状態を陽証と陰証にわけて考えることが常なのですが、西洋医学のそれらはおおむね"陽証の下痢"に相当します。

ちなみに陽証とは、ほてりや発熱、炎症など「激しく、活力の増している様子」のことをいいます。逆に陰証とは、手足が寒々、虚弱など「物静かで、活力の低下した様子」のことをいいます。

陽証と陰証は、脈や舌の診察で鑑別できます。 

 

便の色が赤や黒や白をきたす陽証の下痢を、漢方では『痢疾(りしつ)』とよび、以下ようなお薬を用いて対処します。

・葛根湯(かっこんとう)

  発病当初の下痢、胃腸の風邪

 ・黄岑湯(おうごんとう)

   発熱や腹痛の強い炎症下痢

 ・五苓散(ごれいさん) 

   胃腸の風邪、水逆性の嘔吐

 

・・・

一方で、消化不良や胃腸機能の低下による"陰証の下痢"は、西洋医学では治療の手立てが少なくなります。さらに慢性化してしまうと治せなくなってしまいます。

これが漢方ではお薬が用意されており、対照的といえます。

 

 このような陰証の下痢を『泄瀉(せっしゃ)』といいます。希薄な便が出たり止まったり、勢いのゆるい状態です。たとえば、

1   泥のような下痢

便がベチャベチャ泥状になるのは、体が冷えたり過緊張などにより、脾胃(胃腸)の生理的な消化機能が損なわれるためです。

これには生薬の人参(にんじん)を用います。人参を含む漢方薬に、人参湯(にんじんとう)、啓脾湯(けいひとう)、参苓白朮散料(じんりょうびゃくじゅつさんりょう)、胃風湯(いふうとう)があります。

 

2   冷えの強い方の下痢

 新陳代謝の低下とともに胃腸の血流が滞り生じる消化不良性の下痢です。便は水っぽい薄い色を呈します。

 この治療には、生薬の附子(ぶし)を要します。代表的な漢方薬に真武湯(しんぶとう)があり、様子に合わせ生薬の量を調整して用います。

 

3   冷えの程度がもっと強い方の下痢

体の衰弱がみられたり、手足が極端に冷たい(厥冷(けつれい))場合の下痢です。強い冷えがお腹のひきつれ(寒仙(かんせん))をひき起こすこともあります。

この状態になると、西洋医学ではまったく治療ができません。

これには、生薬の附子と乾姜(かんきょう)の両方が必要です。漢方薬には附子理中湯(ぶしりちゅうとう)、断痢湯(だんりとう)、四逆湯(しぎゃくとう)などがあります。

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