冷えたときのお腹のこわばりは、
お腹が張る
お腹が痛む
であり、前回まで、それを取るお薬の基本が『大建中湯(だいけんちゅうとう)』であることをお話ししました。
・大建中湯
大建中湯は、"お腹が冷えてガスがたまり、膨満する方"のお薬で、キーワードは"冷え"と" 腹部膨満感"でした。エキス剤では100番とよばれる有名なお薬です。
また、腸内のガスによって痛みが感じられるようになったとき用いられるお薬が『小建中湯(しょうけんちゅうとう)』なので、
それと大建中湯とが合わさりできたお薬が『中建中湯(ちゅうけんちゅうとう)』でした。
つまり、「大建中湯+小建中湯=中建中湯」で、お腹が冷え、膨満感を自覚している方のお薬となります。これは、腹満、便秘あるいは下痢にも用いられています。
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ところで、この冷えで生じる痛みが強いものであったとき、つまり腹部膨満感より痛みが勝ったときに用いられるお薬があります。それが、『解急蜀椒湯(かいきゅうしょくしょうとう)』です。
・解急蜀椒湯
これは大建中湯に、附子粳米湯(ぶしこうべいとう)という薬が合わさったものです。附子粳米湯は、もともと冷えてひどくお腹が痛むときのお薬なので、
「大建中湯+附子粳米湯=解急蜀椒湯」となり、お腹が冷え、ひどい痛みを自覚している方のお薬となります。
吐いてしまうほどの強い腹痛の時に用いられます。
実際の臨床では、お腹が冷えてしまうと、腹部膨満感と腹痛が併存する場合も少なくないのですが、中建中湯はどちらかというと腹満の方が強く、腹痛があとから付けたされたようなケースに用いられます。
一方で解急蜀椒湯は、まず強い腹痛があり、それに腹満が付けたされたようなものに用いられます。
この微妙なお薬の使い分けこそが、"漢方薬の妙"といえる点なのです。