「なんだか、お腹がさし込むように痛い・・」
これを「疝痛(せんつう)発作」といいます。
ときに数時間毎であったり、分刻みであったり、周期的にくりかえします。また発作的にギュッ、ギギュッとさし込むので、つらい思いをします。
西洋医学的な視点では、胆石や尿路結石、胃潰瘍などで病巣が内臓を構成する筋肉をけいれんさせることでおこるといえます。
ただそのようなれっきとした疾患とは異なり、体奥底にひそむ"冷え"が腸管をけいれんさせることもあります。東洋医学では、それを「寒疝(かんせん)」とよびます。
痛みには強弱の波があるため、「さし込むように痛む」と苦悶の表情で相談においでになられます。
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80歳代女性の相談です。
「よくお腹がさし込みます。痛む場所は、お腹の右だったり、左だったり、一定ではありません。症状は長く続きませんが、いつも突然におこるので不安がつのります。
病院で大腸検査をうけたら小さいポリープが見つかっただけでした。それは取ってもらえたので、ひとまず安心できたのですが、ただこれがさし込む直接の原因ではなさそうです。
お薬は腸のけいれんを抑えるブスコパンを出してもらいました。しかしあまり改善はみられません。どうして私のお腹はこんなにもつらいのでしょう」
診察で、
彼女のお腹を拝見したところ、いかにも虚弱体質で、手を触れただけで冷感がありました。そのため、これは寒疝といえます。つまり、冷えが腸管をギュッとけいれんさせていると想像できます。
西洋医学では一とおり検査を終えると、慢性胃腸炎や過敏性腸症候群として扱われ、漫然とブスコパンや痛み止めが処方されることが多いのですが、それでは本質的な改善には至りません。
そこで、漢方薬の『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうき しぎゃくか ごしゅゆ しょうきょうとう)』を用います。"さし込む"と来たら、一考の余地があるものです。
これは手足の冷える方に用いられることの多いお薬ですが、呉茱萸(ごしゅゆ)や生姜(しょうきょう)という生薬は、胃腸を温めて保護する作用があるため、寒疝にも効果が期待できます。体力のない方向きのお薬です。
内服は、
エキス剤の場合、顆粒をそのまま口に含み水で飲むのではなく、お湯で溶かしてから飲むことが大切です。煎じ薬の場合"湯煎"ですので、そのままお飲みください。
きっと効果が見られます。