人体には分かりにくい冷え症があります。
一見すると熱があるようにみえるのですが、実は冷えている、そんな冷え症たちです。
それが「真寒仮熱(しんかんかねつ)」と「真熱仮寒(しんねつかかん)」です。
●「真寒仮熱」とは、体の芯は冷えているのに、体表面に熱があるよう感じる現象です。逆に、
●「真熱仮寒」とは、体の芯に熱が潜んでいるのに、体表面では冷たさを感じる現象のことです。
これらは自律神経が、予想を超えてゆがんでいる状態です。
東洋医学では、体温は「熱」と「寒」のバランスによって決まると考えられていますが、その整合性が取れていない様相といえます。
たとえば、お風呂を沸かしたとき、
お湯が沸いたと思って湯舟に手をいれたら、上の方は熱いのに、下の方は冷たいなんてことがありますよね。そんな両極端なことが、一つの人体の中で起こってしまうのです。
そのような現象はたいてい、虚証(きょしょう)という体力のない方に生じます。もちろん西洋医学では冷えという概念のないので、知らんぷりです。
ただ問題は、このバランスの悪さを区別することが意外と容易ではないことです。。
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体が熱い、足の裏が熱い
そんなことを話され、やってくる方々がいます。
熱いと話される体の部位の温度を測ってみると36℃程度、それほど熱は確認されません。でも本人は必死です。なんといって不愉快きわまりないのですから。
本当に熱症なのか、それとも冷え症なのか、漢方独特な脈や舌、お腹の診察から判断します。
この場合、冷えが内在しているにもかかわらず、体の表面には熱を放っているので、「真寒仮熱」と考えられます。
治療は、熱冷ましや冷湿布を処方すると、体はより冷えるので、体調が悪化してしまいます。
ですから体を温める、たとえば乾姜(かんきょう)、附子(ぶし)、少量の麻黄(まおう)のような生薬、あるいは四物湯(しもつとう)のよう漢方薬などを「主(メイン)」にし、
「従(サブ)」の治療に、体を冷ます石膏(せっこう)や黄連(おうれん)を組み入れ、バランスをみながら経過観察する・・
あるいは、地黄を含む八味丸のような津液(しんえき)を補う漢方薬で変化を待つ・・
などいくつかの選択肢があります。