「真寒仮熱(しんかんかねつ)」と「真熱仮寒(しんねつかかん)」
前回は、体の芯は冷えているのに、体表面に熱があるよう感じる「真寒仮熱」についてお話をしました。
それとは逆に体の芯に熱が潜んでいるのに、体表面では冷たさを感じる「真熱仮寒」という現象があることもつけ加えさせていただきました。
いづれも「熱」と「寒」の整合性が欠けた状態であり、西洋医学ではそのような概念はありません。
問題は、このバランスの悪さを区別することが意外と容易ではないことです。
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『体が熱い、足の裏が熱い』そんなことを話され、やってくる方々がいる、
という例から「真寒仮熱」を紹介しましたが、
実はまったく同じ症状なのに、逆に「真熱仮寒」の方もいらっしゃいます。
これが相反する両者を区別することが難しいゆえんです。
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「真熱仮寒」の典型は、本人は手足が冷えて困っているものの、身体には冷えの箇所が見あたらない例です。
つまり、手足の冷えは本当の冷えではなく、熱が巡っていないだけ「熱厥(ねつけつ)」が原因です。
でも先の例も含め、どのように区別するのでしょうか。
寒熱は、やっぱり漢方独特な脈や舌、お腹の診察から判断します。つまり冷え症、熱症の方には、それぞれ特徴的な脈舌腹の所見というものがあるのです。
悩みの症状がたとえ冷えであっても、所見がミスマッチでしていれば「真熱仮寒」と想像できます。
臨床医学では、本人の訴える症状が第一優先なのですが、それを鵜呑みにすることもできない面があるというわけです。
症状と原因とは、点と点で単純に結ばれるものではなく、薬も直線的に決定されるものではありません。
症状を発するに至る原因は、人それぞれ、体質や生活スタイルによるものですが、もうひとつその罹患の長さによっては特徴が埋没することもあり、見えにくくなってしまうこともあるのです。
つまり、
●冷えの症状→冷え症が原因
●熱の症状→熱症が原因
というシンプルな状態があります。しかし、
◎冷えの症状→熱症が原因
◎熱の症状→冷え症が原因
というねじれた状態も起こりうるということです。
このあたりが"人体は複雑"といわれる理由です。
実に分かりにくい話ですね。。
そのようなこともあり、その東洋医学的な判断は、ぜひ漢方医におまかせいただきたく思うのです。