中高年世代の男性、
太ももやふくらはぎ、足の裏に熱さを感じます。
とくに足の裏は靴下や靴をはいていると余計強く感じてしまいます。だから電車でそっと靴を脱いで、靴下を下げてみると、実に気持ちが良いのです。この感覚は経験した人にしかわからないものでしょう。
足を触ってみても、熱っぽくありませんし、センサー式非接触型の体温計でピッと測ってみても平熱です。
ですがやっぱり、寝ていても熱いので、アイスノンや冷えピタを張ってみたり、布団から足を出して寝たり、いろいろ試してしまいます。
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実はこの症状を相談されることは意外に少なくありません。
西洋医学の科にすでに相談されていることも多く、たとえば神経内科や脳神経科、循環器科、心療内科、そして整形外科などに回られています。ですが、解決に至ることはありません。理由は西洋医学の考え方の枠の中に、その症状が存在しないからです。
体の局所、しかも機械で客観的に測定できない熱については、足に生じる方が多いのですが、他には、二の腕、背中、腰に感じ方もいらっしゃいます。
男性女性とも、ほとんどの方の悩みは深く、眉間にしわを寄せながら相談に来院されます。
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さて東洋医学ではそれを、『体をうるおす津液(しんえき)の働きが乱れたことが原因』と考えます。津液とは、体にうるおいを与える成分の総称で、身体の熱と寒を調和する物質(的な概念)のことをいいます。その乱れが違和感の強い熱に通じます。
もちろんこれが真の原因であるか明白でない部分もありますが、東洋医学では虚熱(きょねつ)、煩熱(はんねつ)として手立てが考慮されています。
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この類の不調は、年齢とともに生命力が低下した『腎虚(じんきょ)』でおこりやすく、具体的には
・疲労やストレスなど社会生活の要因
・運動不足を背景に、筋力の低下や自律神経の不具合
・更年時期のホルモン変化
などの影響を重ねてうけ、引き起こされる印象があります。
そうであれば、まずは生活の中で改善させるべく、日々の習慣を見直すことが大切です。たとえば、社会生活のスタイルを変える、食事の内容や量を見直す、運動を始める、十分な睡眠の確保する、などは改善への第一歩になります。
これらの点に心あたりのある方は、少しずつ是正を心掛けると良いでしょう。完璧さを求める必要はありませんが、真剣みは大切です。
そしてそれでも改善が薄いようなら、漢方で八味地黄丸(はちみじおうがん)という腎力を補うお薬があります。
それに対症的に、ほてりに石膏(せっこう)や黄連(おうれん)などの熱を冷ます成分や、血のよどみに駆お血剤(くおけつざい)を添えて用います。それらや附子(ぶし)の量の匙加減も必要なので、エキス漢方薬よりも煎じ薬の方が適当です。
知らない間にはぐくまれたこの症状ですので、改善には時間も要しますが、結構漢方で何とかなるものです。