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2025年5月25日 21:30

119. 感冒・鼻炎・咳に漢方薬(大建中湯)

 ひとたび感染症にかかると、初めは「熱、頭痛、関節痛、のど痛、鼻水、咳」などであっても、時間とともに様子が変化してきます。

「だるさ」はもちろんのこと、徐々に「吐き気、胃もたれ、胸満、腹満、未消化下痢、腹痛」などの胃腸症状が生じてきます。

 

 新型コロナウイルス感染症の場合、2カ月以上体調不良が長引く方も多く、感染後遺症への治療を求め来院される方もいらっしゃいます。

 そこで東洋医学では、このような段階を”体の新陳代謝の落ちた太陰病(たいいんびょう)”と考えて、温めつつ代謝を回復させる治療を探るわけです。

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 ところで、太陰病とは

熱の病気によって体がひどくダメージを受け、体力や胃腸の働きまで落ちてしまったとステージのことをいいます。

これはお腹に“新たな疾患”が生じたわけではなく、新陳代謝の火種が消え、体の奥・内臓が冷えている状況をさします。

 

 治療としては始めに建中湯類の

「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」や

「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」

を用います。これらの薬は "お腹の中焦(ちゅうしょう)"の働きを回復させる、“中を補う”ことができす。

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 ところがこれだけではまだ食べることができない、食欲があがらない、吐き気さえする」という方もいらっしゃるので、次に同じ建中湯類の

「大建中湯(だいけんちゅうとう)」を用います。

これには生薬の「蜀椒(しょくしょう)」「乾姜(かんきょう)」が含まれているので、お腹の中焦を温める、“温中する”ことができます。

 

 中国古医書『金匱要略(きんきようりゃく)』には

『心胸中(しんきょうちゅう),大寒(だいかん)痛し,嘔して飮食する能わず(あたわず)。腹中寒え,上衝して皮起こり,出で見るれば頭足あり。上下痛み觸れ近づくべからざるは,大建中湯之を主る(これをつかさどる)』とあります。

 

 つまりお腹が冷えると「吐いてしまって食べることができない、鼓腸をきたす、痛む」というわけです。

 実際、軟弱なお腹に(しこりと間違えそうな)モコモコ長い便塊やガスを確認できることもあり、そのようなときは、小建中湯の“補う”作用ではなく、“温める”大建中湯を用いるべし、ということです。

 

 要は、 

  •  軟弱なお腹の方
  •  体の冷えによるお腹症状のある方
  •  ゴロゴロ鳴るお腹の方
  •  ガスや便のたまりが触れるお腹の方

 に大建中湯は有効です。

 

 さらにこの薬は、それだけの作用にとどまらず、

  •  やせた高齢者の慢性便秘
  •  お腹の手術をした後に腸が癒着し、腸閉塞をきたしやすい方

にも応用でき、重宝される理由となっています。

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